カテゴリー「書籍・雑誌」の記事

2009年4月 1日 (水)

これでまあ いいや!飛ぶ教室

09031119

彼は金持だった そしてホテルにこしかけて
いちばん高い いいものを
飲んで食べた
いい気持になって 飲んで食べたそして給仕や客にグラスを上げて ウインクした

そばに立った花売りの手から
花を取り
二枚の札で勘定をした
バラは紅くて 冷たかった
彼は30マルクよけいにやった
すると女は泣き出した

六人組の管弦楽団は
彼から200マルクうけとった
六人組はこれ以上 何をもっとやっていいか わからなかった
ボーイにも ピッコロにも
女にも ジゴロにも
見さかいなしに くれてやった

勘定書には目もくれず
札を投げだし
ホールを出た
ダンサーも ボーイも 給仕たちも
夢中でゾロゾロついて出た
それほどみんなに慕われた

彼はよろこんで「いいよ いいよ」と言った
そして外套と帽子を受取った
そのとき預り所のオバサンが
「お召物の保管料を
30ペニヒいただきます!
あら くださらないの ずいぶんだわ!」と叫んだ

そこで彼は立ちどまり 笑って
金を捜したが もうなかった
そして何一つやることができなかった
花売り女も ジゴロも
給仕も ボーイも ピッコロも
そばに立って 知らぬかお

彼は懇願するように 見廻した
みんなしゃちこばって 黙っていた
あたりに彼なんかいないように
そこで彼はサッサと外套を脱ぎ
女に渡して ホテルを出た
そして「これでまあ いいや!」と思った


ケストナー人生処方詩集」(ちくま文庫)より「偶然による残高」


今夜は、ひと様の言葉を借りて。

ケストナーは、子供の本「飛ぶ教室」や「点子ちゃんとアントン」「エミールと探偵たち」で知られる作家。もともと詩人として出発した人で、ヒトラーの時代をしぶとく生き抜きました。

この筑摩書房から出ている「人生処方詩集」というのは、まさにブンガク処方箋。

「☆生活に疲れたら」、「☆自信がぐらついたら」、「☆同時代の人間に腹が立ったら」、「☆金が少ししかなかったら」、「☆孤独に耐えられなくなったら」、「☆母親を想ったら」、「☆天気が悪かったら」…… などなど36の症状別に、薬となる詩作品を揃えている、ユニークな本。

痛烈な社会批判や風刺の目を持ったケストナーの言葉は優しくはない。けれど、そこにかえって共感を覚えます。うんざりするような世の中でも、希望を捨てずひょうひょうと生きている人の心意気が伝わってきて、ときどき開いて服用したくなる^^一冊です。

紹介した作品は、「☆善行が利子をもたらすと思ったら」服用する作品に挙げられていました。いいことしてやったって結果はこんなもの、と、シニカルなんですね。けれど、それで何かに気付ける人もいる。

最終連の「これでまあ いいや!」というところを読むと、わたしはいつも胸がスっとします。

使いきれないお金のあったことはないけれど、理不尽な目にあったときや、人の本当の姿が見えたとき、

当惑と同時に、真実がわかってしまって気が済んだ気持ちが湧いてくる。

「これでまあ いいや!」とふっきれたように感じることが、わたしはあります。そしたら、外套を捨てて、出発すればいい。春ですし^^ あなたは、いかが。

いつもありがとう☆今日の占いblogランキング☆

| | コメント (2)

2008年6月28日 (土)

怖れるに足ることがあるとすれば

012

真珠採りが始終サメにおびえていたら、真珠を手に入れることなどできない。」

13世紀のペルシアの詩人、サーディーの言葉をあげて、「恐怖」について考察しているのは、グレイリング先生。イギリスの哲学者。

「考える快楽」(NHK出版)という本で、彼のさまざまな思考方法を知り、自分の人生までふりかえることができます。

「哀しみ」「死」「裏切り」「慈悲」「希望」「嫌悪」など、たくさんの項目について、古い学者や文学者の残した言葉をとりあげて、自身の解釈が綴られており、一般向けですから比較的わかりやすい文章。

こんなふうにも考えていいんだと思えると、気持ちがラクになるものです。

未来のために、人類古来の知恵を、使えるものなら使わなくては^^

「恐怖」の項目では、

「恐怖は認識力をゆがめ、なにもないところに障害物や怪物を勝手につくりあげる」ので、恐怖心にとらわれると思考は停止するとしながらも、

「恐怖心は、それに耐えるために存在する。おそれるからこそ、人は勇敢になれる。」と書いています。

 そして、

 「生きるのはたった一回のみであり、

  わたしたちは真珠を手にいれようと挑まなければならない。

  さもなければ、後悔しながら生きつづけることになる。

  そして、もし、

  この世界でおそれるに足ることがあるとすれば、

  それは、最後に後悔しながら一生を終える原因を

  自分でつくるような生き方をすることである。」 と。



…今週は、横浜の読売文化センターに珍しいお客様を迎え(詳細は後日紹介しますね)、また講義の後に、数名の受講生から、手相に対する考え方や、これまでの人生について聞く機会に恵まれました。

手相を学ぶ方には、自分の人生に関心が深い方、苦労された方、それでいて前向きな方が多いのを再認識。わたくしも、占いに関わるとはどういうことなのかと改めて考えさせられ、有意義でした。協力くださった皆さん、ありがとうございます。

そして、本当に怖いのは、不安や妄想から作り上げた恐怖のイメージではなくて、後悔して一生を終えるような生き方を自分ですることなのだ、というこのグレイリングの文章も、むくむくと思い出されてきたのです。

いつも投票ありがとう☆今日の占いブログランキング☆

| | コメント (8)

2007年7月26日 (木)

誰も白鳥の湖を踊ってるわけじゃない

09sbbいくらか涼しい月夜を散歩。平日でも、学生が夏休みに入ったからでしょうか、駅周辺は開放的なムードが漂っていました。

昨日は徹底的お休みで、本を拾い読み。「老子」を読んだり、赤坂真里さんの「ヴァイブレータ」を今頃読んだり^^、いただきもののお香を焚いてうとうとしたり(老子が眠い)メロンを食べたり?!していると、幸せ。単純です。毎日これだとボケるかも、ですが。そして、スペンサー先生はいいこと言ってないかな、と、「レイチェル・ウォレスを捜せ」(ハヤカワ文庫)を再読。

レズビアンの作家・レイチェルのボディガードとなった、私立探偵スペンサー。1980年のアメリカの話なので、今よりも、人種や性差別、マイノリティーへの偏見、嫌悪、中傷、興味本位の扱いなどひどい頃。黒人、ゲイ、共産主義、下層階級、ウーマンリブなど十把ひとからげで「民主主義の敵」として迫害する人達もいて、女性解放を主張して行動するレイチェルは、命を脅かされます。

…男の中の男、粋な男を誇るスペンサーと、男性優位の考え方に抵抗するまじめ一本槍のレズビアン、レイチェルは相容れない関係なのだけれど、ともに修羅場をくぐり、時を過ごすことで、尊敬しあうようになるところが感動を誘います。

↓レイチェルと恋人の女性が一夜を過ごすホテルの部屋の前で、見張りを続けるスペンサーが、思わず妄想を膨らまし、自分と恋人スーザンのことを重ねるシーン。

「行為中の二人を想像し、いったいどんなことをするのだろうと考えると、なにか不快ないやらしいことのように思えた。実際にはスーザンと自分の間の行為もさして品がいいとは言えないかもしれない。よく考えてみると、誰も白鳥の湖を踊ってるわけじゃない。」

誰も白鳥の湖を踊ってるわけじゃない。

名言。ニヤリ、です。

自分だけが正しいと主張する人の頭の中には、こんな考え方はないのでしょうね。ジョークのかけらも。

もしかして、白鳥の湖を踊っている気になっている政治家などがいたら、それは、危険なことです^^ 絆創膏程度ならよいのですが(*あの絆創膏農相は、禄存星3つ、司禄星1つ、天堂星2つで、強運ではありますが政治家にしては自意識過剰で口が重すぎます)。

正しいことというのは…

正しいことというのは、あとで気分がいいことなんだ」。

先生、また名言ですね。

「ヘミングウェイの文句だ。頭のいい男だ、ヘミングウェイは。腹をへらしたままホテルの廊下に突っ立ってるようなことはしなかった。」

なんだ、スペンサーの先生は、ヘミングウェイだったのか…。

正しいか、正しくないか、確かに瞬間的には、わからないことが多いです。ですが、「あとで気分がいいこと」というのは、納得がいきます。

今、参議院選前ということもあり、色々な人の主義、主張を耳にすることも多いわけですが、その方達が、「あとで気分がいい」ことを言っているのかどうか、さて、有権者はバカじゃない、チェックして楽しみましょう。

なお、仙乙恵美花は特定の政治・思想団体、組織に傾倒するものではありません^^

いつもありがとう☆占い人気ブログランキング☆

| | コメント (2)

2006年7月10日 (月)

愛するか憎むか?体力が問題だ

Box_w_moebius_2すっきりしない空模様。体の中まで湿ってきそう。からだを適度に動かして、体内乾燥したいですね。雨が大きな被害をもたらしませんように・・・

昨日、古いモノを処分しようと片付けていたら、「日めくりデキゴト史365」(北嶋廣敏著)という本に目がとまりました。発行されたのが昭和63年と古いのですが、暦は古びないからなぁ~と、ページを開いてみました。(これをやっているから、なかなか片付かない…)

7月9日は、ロシアのエカテリーナ2世が、愛人達をそそのかし、夫のピョートル3世を帝位からひきずりおろしたクーデターの日だとか(1762年のお話です)。

なんでも、ピョートル3世は性的未熟者のため、エカテリーナ2世が作った愛人は200人とも300人とも言われています(さ、さんびゃくにん…)。肉体的欲求が余りに違いすぎては、やはり夫婦円満というわけにはいかないのでしょう。その点、手相では、親指の下、生命線に囲まれた丘の面積、膨らみをチェック、です。同じような膨らみなら、(夜のお話だけでなく、行動全般において)二人三脚が容易です。

夫は夫として飾っておいて、割り切って楽しむという選択肢もあったと思うのですが、エカテリーナ2世という人は、愛憎(欲望)の強い人だったのでしょうね。欲望激しい人には、(個人的好き嫌いは別にして)強い生命力が感じられます・・。

「女というものは愛するか、さもなくば憎むしか しないものだ」なんていう、サイラス(どのサイラスか不明)の名言が、付け加えられていました。どうでしょう? 

ちなみに、今日7月10日は、フランスの詩人、ランボーとヴェルレーヌ(2人とも男性)の恋愛に破局が訪れた日(1873年)。別れ話をもちかけたランボーに、ヴェルレーヌが発砲。ランボーは死にませんでしたけど、以来、2人が会うことはなかったとか。

古今東西、激しい生命力が生む激しい愛憎劇が、暦に刻まれてきているわけですが・・・、昨今は、この手のお話よりも、凄惨、冷酷な事件ばかりが目に付きますね。そして打算的な関係、婚姻なども…。ドラマや映画の純愛モノがヒットするのは、ちまたに愛が足りないせいでしょうか。

愛するにも憎むにも大変なエネルギーがいるわけです。「手っ取り早く」はできません。私たちのエネルギー、何かに吸い取られているのかもしれませんね。

いつもありがとう☆占いブログランキング☆

| | コメント (6) | トラックバック (0)

2005年12月31日 (土)

笑うブタで大晦日となり…。

n_44雑誌類を片付けていて、15年ほど前の「太陽」(平凡社)に目がとまりました。表紙は舟越桂さんの彫刻。

ついページをめくり、博物学者で神秘学者の荒俣宏さんが、ソウルにシャーマンを訪ねた記事の特異さに興味をひかれ、読みふけってしまいました。(片付け下手の好例ですね)。

・・・高らかな音楽と派手な色彩、捧げものの笑うブタ、飛び交う万ウォン札。なまなましく、芸能じみた儀礼。

笑うブタ1頭(そう見えるように細工)と、色とりどりの盛り菓子が飾られた祭壇の前で、シャーマンと依頼者が交わす会話は… 「おまえに大儲けさせるから10万ウォン寄越せ」。「いやです。1万ウォン供えますから100万ウォン稼がせてください」。「それは虫が良すぎる。では、3万ウォンではどうか」…。

荒俣さんがさすがだと思うのは、結論づけないリポートをされていること。儀式の合間合間に供される人参ドリンクでお腹をくだした荒俣さんは、こんなふうにコメント。

「日本ならば、神は清い場所に降りる。しかし韓国の神々は、欲望のうずまく贄(にえ)の祭壇に、笑いながら降りたつ。」

「不浄や潔斎という概念が崩れるのを実感した。神々は欲する者にこそ手を差しのべる!」

肯定否定でなく、こんなふうに書かれると、「???」と内心、感じていたことも、それはそれでいいのではないかと思えてきます。荒俣さんのようなひとこそが、あちらこちらの垣根を超えて行き来できるひとなのだなぁと思います。

私は若い頃、神社仏閣に参拝拒否していた時期があります。もちろん、教会も。ひとを超える存在を信じるのと、ひとの運営する施設にお金を投じることは別だ、意味がないと言っていました。信仰へのそんなこだわりは、神様のような存在を求める気持ちが逆にとても強かったからかもしれません。うまく説明できませんが。今は、普通にお賽銭をあげて参拝しています。いつも同じ身近な人たちの健康と明るさを祈ります。いろんなことが混沌としたまま、混沌としたままをそういうものなのだと、受け入れられているのだと思います。

荒俣宏さんは1947年7月12日生まれ。算命学でいうと土性の司禄星を縦線に3つ持ち、破天荒な生月中殺。ほがらかそうに見えても本心は土の中、書籍蒐集マニアとして知られる点など、なるほどと思いました。従生財格破格で、破は、日支になるので、普通の家庭を持たないほうが荒俣さんの運勢は強いのですね。60代も驚かせてくれそうです…。

そして、大掃除は、なかなか終わらなかったのでした。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2005年12月21日 (水)

口をしっかり結んで歩け

appleC_small今年の風邪はお腹にくるんですって?

月曜日一日中、人ごみの中にいたせいか、しっかりウイルスをキャッチ。「お腹が痛いなぁ」と意識したらもう、動けませんでした。風邪は占いでは治りません。休養いたしました。治りました。大掃除が後回しになってしまいました。(もしかしてこのまま年末か…)

こんなときに限って、久しい人たちからメールが来るのは不思議なもの。

休養モードで、心身に隙間ができたのが、相手に伝わるのでしょうか。

「口をしっかり結んで歩け」

くじけそうになると、ある詩人の脳裏に思い出される父親の言葉。先日、手にした詩集にありました。(清水哲男「黄燐と投げ縄」(書肆山田))

私なんて、そんな、のちのち力になる言葉を親からもらった覚えはないゾと思ったのですが、アイスノンを抱いてめざめた今朝に、ふと思い出しました。

「山をのぼるのに急いではいけない」

足元を見てゆっくり進めと、小学生の頃に言われたのでした。対立してばかりの親子でしたが、山育ちの父親が山歩きの最中にもらした言葉たちは、今でも、そのときの情景と共によみがえってきます。

急な坂道や階段をのぼる時にも、ふと思い出されます。特別な言葉ではないのだけれど。

言葉には、人を支える力がありますね。

だから、言葉を惜しまないで。大切なひとに、声をかけてください。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2005年12月16日 (金)

王は孤独なるもの

heart_miniF「結婚あきらめた」「孤独」…。真相は知りませんが、中島みゆきさんが高級老人ホームを購入決定したとして、某女性週刊誌の広告大見出し。

偏った宿命の人を、憧れる一方でねたむ、というのが、バッシングの根底にあるのでしょうね。

女性週刊誌は、ほどほど幸せな人たちの幸せ秤なのかもしれないなぁ、と、感じています。美容院でよく情報収集させてもらっているのですが。

スターを、もちあげては、おとす。被害者を、皇族を、もちあげては、おとす。もちあげては、皆でつきおとす。

自分は、もちあげられも、おとされもしない。幸せです。

でも、それを幸せと感じられないところに、ひとの、つまらなさがあるのですよね。

同時に、面白さ。

一面からでは語れない、ひとの複雑さとわかりやすさ、愚かさと変化する輝きが、他の動物にはない魅力だと感じています。

中島みゆきさんなら、そういうところをよくご存知だろうと、ふと思いました。

私の故郷ではしんしんと雪が降っています。ですが、快晴の窓辺でパソコンに向かっている今の私には、雪面を踏みしめて歩く人たちの心持ちが、もはやわかりません。わからないということを、忘れないようにしていなければと思っています。

また変な話になっちゃいました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)