よろこびは
よろこびは日日にあたらしわが庭に青き今年の柚子の実数ふ
よろこびは日日にあたらし水槽に今朝グッピーの子を見つけたり
よろこびは日日にあたらし初めての黄の睡蓮の咲きたることも
よろこびは日日にあたらし五人目の乳の匂ひする曾の孫を抱く
淀みゐし言葉一つが立ちあがり一首成れるもよろこびとして
朝の庭に百舌の高鳴き聞きたりと書き添へて今日の日記閉ぢたり
今日の事皆なし終へて身は弛(たゆ)しワイングラスを置きて寝むとす
終(つひ)の時もかくあれと思ふ溶くるごとひとりの眠りに入りゆくとき
山内章子 歌集「ゆふべ華やぐ」(角川書店)より
ご縁の方から、歌集をいただきました。
ご主人に先立たれてから三十余年。「運命線がどんどん伸びてきて、わたしは生きてゆくのだなと」迷いの中でも思ったという話を、著者から聞いて感銘を受けたことがあります。
幼かった孫が結婚し、曾孫が生まれて、子供たちの成長ぶりによろこびを感ずる今。歌集は、日々の発見にあふれています。
孫がいて曾孫にも恵まれ豊かに暮らしているから幸せなのだ、と、言う人は言うでしょう。けれど、そればかりでない、山内さんの幸せ上手の秘訣は、日々を見つめる新鮮な視点にあると思えます。観察者の視線と言ってもよいでしょうか。
観察者の視線があるのは、精神的に自立されている方です。
精神的に自立しているから、自由に歌も詠めるでしょう。歌は、五行で言えば火性にあたり、精神の未来をめざす行為。子供の成長を喜びながら、山内さんもまたいつまでも、みずからが未来を指向して生きていらっしゃる。
そのことが、読む者にも、羨望ではなく、安らぎを与えてくれる。孫がなくても曾孫がなくても(^^
…どんな状態でも、不幸だ不運だと言うひとは言います。
どんな状態でも、また、よろこびを感じられる人は感じられる。それは、運命のせいでしょうか?
わたしは、そうとばかりは考えないのです。
孤独な性状のひとにも、親しく感じられるだろう歌が、山内さんの歌集にはあります。
それは、山内さん自身がきちんと個を生きているからなのだと、わたしには思えます。
晩秋(おそあき)の庭にくれなゐ深まりてゆふべ華やぐ酔芙蓉のはな
歌集のタイトルにもなっている「ゆふべ華やぐ」酔芙蓉。朝方、白く花開き、だんだんとピンクに染まって、お酒に酔ったかのように夕刻から夜にかけては紅に色づいて、そうしてしぼんでしまう花。
はかない命、と見るか、鮮やかな生、と見るか。ゆふべというのは、昨夜なのでしょうか、一日の終わりなのでしょうか、いくつもの酔芙蓉の花が色づき開いた夕刻の庭を、著者と同じように見ている感覚を覚えます。きれい。と、思える自分のこころに、勇気づけられる思いが、また、します。
・・
さてさて、わたくし事では、12月の予定もクリスマス頃までほぼ埋まり、あとは日々務めてまいるだけとなりました。
同じような繰り返しの中にも、それでも、
「ゆふべ華やぐ」と、ふり返り、脳裏に薄明るくともされるような瞬間の記憶を、一度でも二度でも数え増やすことができるなら、幸いな人生といえるのでしょう。意識してまいりたいものです。
…師走が迫り、ご無沙汰を重ねているご縁の方がたを思います。思うばかりでごめんなさい。お元気でいらっしゃいますか。健やかな日々を心から願っています。
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