思い出してもらうのを待っている。なんでもなさと大切さ
暑中お見舞い申しあげます。
いっきにお暑うございます。お元気ですか。
先日、三谷幸喜さんによる舞台「日本の歴史」を新国立劇場にて観てまいりました。
卑弥呼から太平洋戦争までの歴史を、中井貴一さん、香取慎吾さんはじめ7人の俳優が60人以上の役に早変わりして演じます、耳に残る歌と振付のミュージカル仕立てで。
アハハと笑って、切なくなって、考えさせられる。大変おもしろくて、心に残りました。
宣教師によってアフリカから連れてこられ織田信長の家臣となった弥助や、処刑された自由民権運動の士など、歴史の表舞台から消え名前を知る人も少ないだろう人物を取り上げて、信長など著名人と並べその人生にスポットを当てていることに感動を覚えました。
「時代が動く時には必ず陰で泣く者が出てくる」というメッセージとともに、
登場人物の名前を連呼する歌が、愉快なんだけど、徐々に心に刺さります。「♪オレひとおえみか、♪オレひとおえみかだー」みたいに、有名な人も無名な人も同じように、本人が歌うのです。
「♪オレ生きていたんだよ」と聞こえるようで、
確かにその時間その場所にその人がいて、その人として生きていた。そう感じられて。
夏は、亡くなった人を思い出す季節?
それで怪談シーズン? というわけでもないんですけど、中島京子さんの「ゴースト」(朝日文庫)を購入しました。
面白いと感じた作家さんの全作読破に走るタイプのわたくしなのですが、幽霊ものが実は苦手(-.-) こわいのダメ、心霊写真特集なんて見れません。それで敬遠していたのですが、読むものがなくなりつつあり中島切れしてきたので買いました。
読もうかなぁと逡巡し、とりあえず巻末の解説を開いたところ、「思い出してもらうのを待っている」というタイトルに心臓つかまれました(^^)
「生き物は、やわらかい機械だと思う」という言葉で始まる、歌人で作家の東直子さんの文章でした。
「人が死ぬということと電気製品が壊れて動かなくなることとは、似ている」と、続きます。
実は、私事になりますが先月から生徒さん関連の訃報が続いたのです。それで少々沈んでいました。誘われた三谷喜劇を見に行ったのも、気持ちが変わるかなと思って。そこへきて、東さんの詩歌のような言葉がまた沁みて。
「日々揺れ動くこの気持ちも、電気信号のようなものなのか? 肉体がなくなっても、電気信号的な心が、ふっと空中に残ってしまうこともあるのではないだろうか。魂や幽霊と呼ばれるものは、もしかしたら、その、ふっと空中に残ってしまったなんらかのものなのではないのか、と。」
「気配やたたずまい、オーラと呼ばれるような、その人が纏(まと)うなんらかの感じを表現する言葉があるが、それは電気信号、あるいは魂がにじみ出ている状態である気もする。そして、心臓が止まり、身体の機能を失ったあとにも、気配やたたずまい、オーラ、あるいは魂が消え残った状態が、この本を貫く「ゴースト(幽霊)」なのではないかと思う。」
さすが歌人の感性というのか、解説だけでも一つの作品のように感じられ、最近の文庫は高いけどこれはおトク感あり、本文も読みたくなります。
<ゴーストはなんにもできない。死んだらおしまい。誰かに乗り移ったり、怨念をまき散らしたり、そんなことはできない。ただ、横にいて、思い出してもらうのを待ってる。あんたのつい隣で、待ってるんだよ>と、作品中のゴーストの言葉を引用して、最後にこうまとめられています。
「死者は語れない。しかし、年表の裏をめくって耳をすませば、表舞台にはいなかったけれど、確かに生きてきた人の顔が見え、声が聞こえる。言葉にならなかった幻の声を書きとめようとする作者の確かな意志と願いが、これらの言葉からじんじん伝わる」と。
三谷幸喜さんの「日本の歴史」の余韻とも相まって、今のわたしには励ましとなりました。
訃報のことを書きましたが、長く親しくしてもらっていた年下の生徒さんが亡くなられたことが特に受け入れ難かったのです。
数年前から余命を承知し死後のことまで準備していた彼女にくらべ、もっと伝えるべき言葉や感謝があったのではと思われて苦しくなるわたしの不甲斐ないこと。これではどちらが先生かあやしいものです。
悲しみの中、教室のグループLINEに報告を書きこんだところ、返ってきた記憶や言葉にハッとしました。
LINEに参加していない10年以上前の生徒さんだったにも関わらず、勉強会や懇親会のほんのいっときをともにした彼女の印象や言葉を覚えていて伝えてくれた人たちがいて、
「(年若い自分に)優しく話しかけて下さったこと、話しかけてくれた内容まで鮮明に覚えています」
「うんうんと相づちをうちながらタイミングよくスパッとコメントされていた印象です」
「いろいろ段取りして逝かれたというのが、あまりにピッタリで、少しニヤッとしてしまいました。当時を振り返って、目頭が熱くなります」と。
彼女と面識のない人からも、「カッコイイ方ですね。きっとあちらの世でも良いお仲間に囲まれているんでしょうね」と。無断転載ごめんなさい、この言葉に慰められました。ほんとにそうだろう、と思えましたので。
人は、覚えられているんですね。その人の発した言葉や気配によって。
自分のことなんて誰も気にしていないと思っている人であっても、案外、言葉や気配が記憶されているかもしれないよ。
たとえ限られた数の人であったとしても、彼らがあなたを折々に思い出すのかもしれないよ。
♪「あなたが悩んでいることは いつか誰かが悩んだ悩み」だったかな、舞台「日本の歴史」で繰り返されていたフレーズ。歴史上の有名な人、無名な人が歌っていた、入れ替わり立ち代わり、何度も。
夏は不思議なもので、この世から旅立った人たちの気配が近く感じられる季節。
また、過去の自分の気配さえも、夏休みの思い出のように近くへ返ってくるようにも、わたしには感じられます。
いなくなった人、過去の出来事、それらは、思い出してもらうのを待っているのかもしれない。悔いるためではなくて、今を生きる人が歩むため、思い出されるのが必要なときに。
なんでもない言葉のやりとり、出来事や想い… いつかは消えるものであっても、気配は残る。積み重ねていくことの、なんでもなさと、大切さ。
年を追うごとに思い出になる人たちが増えるのが切ないけれども、それだけ過去から大きく支えられると考えることもできる。
遠出も宴会もお見舞いもできなくてマスクの中はムレムレだけれど、
♪「オレひとおえみか」♪ほー「おまえ〇〇〇〇〇〇〇だー!」♪「オレいま確かにいますよ」と、かき氷の写真をSNSに載せたりして、気配は気配に影響して、流れていくけれども、記憶の気配は残る、
夏を楽しみましょう。
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